お客さまのご要望
熊本地震で被害を受けた92年前に建てられた大正時代の建物の構造体を一度丁寧に生捕り解体して補強をして組み直しもう100年持つ建物に再生してくれ!
と友人に言われ職人魂に火を着けられました。
ポイント
【受注のキッカケ】
建築専門学校時代の友人が経営している大正時代の建物の店舗が熊本地震で被害を受け半年経っても「古民家再生出来る。」と言う大工さんが復興支援の関係もあり見つからないと友人から連絡があり一度現場を見に来てもらえないかというので宗像から視察に行くと「どう?出来る?」と言うので「出来んことはないけど」と言うと「じゃあお前せぇ!」と言われ言葉で言われた訳ではありませんが
「俺を助けてくれ!」というような感じが伝わって来たので「やったろうやないか!」と受注しました。
【施工のポイント】
2016年4月に発生した熊本地震で大正時代の建物で友人の店舗が被災したのですがこの店舗を当初建物全体をジャッキアップして基礎を造りその上に建物を降ろして内外装工事をする案が上がっていたのですが、ジャッキアップした建物の下での基礎工事が困難ということで建物の構造体を丁寧に一度解体して補強を施して立派に再生しました。
お客さまの声
まだ工事中ではあったのですが一度解体して使える木材はそのまま使い、使えない木材は新しくして補強して棟上げした時、友人が「すげ~!すげ~!」と言ってくれ外装工事が完成して足場を解体した時も「あんた!すごいもん造ったなぁ~!」と言われ鳥肌が立ちました。
全て完成した時は「完成した瞬間から文化財や!」ととても喜んで頂きました。
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母屋材
①阿蘇で丁寧に解体して白木建設の作業場に搬入した母屋材の表面が虫に食われていたので表面のみ手斧(ちょうな)を使って斫って虫食いの部分を綺麗な木肌にして母屋材として同じ場所に戻して組み上げます。
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桁、母屋材
②大正時代の建物に使用されていた2階の桁(杉材)と母屋材(杉材)です。
2階の桁に使われていた古材は傷みが激しく特に継ぎ手や仕口部分が傷んでいたので短く切って転用しようと思い図板を見ながら古材を調査している様子です。
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古材転用
③2階の桁だった古材を今回1階の胴差に転用してホゾを付けている様子です。
この古材は抜群に乾燥しているので転用しても100年は持ってくれると思います。
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④新しい構造材の中に混じって古材がありますが、この古材も転用材です。
新しい材木よりも古材の方が硬く古材の乾燥状態と環境が良ければ木材は
年々強度を増していくのでまた新たな場所で力を発揮してくれるでしょう。
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⑤この古材も2階の桁材だったのを長さを短くして今回1階の下屋部分の化粧桁と化粧胴差に転用して組み直します。
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⑥下屋の桁に使っていた古材を元の位置に戻そうと計画していたのですが下屋の窓開口が広く設計変更されていたので断面の大きな新しい桁に替えたのでつなぎ梁に転用して墨付けした様子です。
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⑦古材の桁を転用して化粧つなぎ梁の生まれ変わったのですが、92年間風雨にさらされていた為外部側の桁表面が傷んでいたのでハマグリ手斧(ちょうな)という道具で傷んだ部分を斫って斫った痕をそのまま化粧としてなぐり仕上げにしています。
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⑧元は1階の大和天井の梁に使われていた古材ですが、継ぎ手仕口部分が白アリの害で5mの梁として使えなかったので白アリの害がない部分を2mの化粧つなぎ梁に転用して下端をハマグリ手斧(ちょうな)で斫ってなぐり仕上げしている様子です。
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⑨転用古材をハマグリ手斧(ちょうな)でなぐり仕上げを施した化粧つなぎ梁です。はなびしに行った時に探してみてください。
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⑩小屋組みの構造材の三引きという梁の束穴が打ち抜いてあったのですがその束穴に長年雨漏り水が浸入していた様で束穴がやけて腐食していたので表面の腐食箇所を取り除き埋め木をして補強している様子です。
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⑪少し大きめの埋め木にボンドを塗布して先に加工していた切込みに埋め木を叩き込んではみ出た部分を鉋(かんな)で削って面合わせしている様子です。
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小屋 梁
⑫2階の座敷の上に掛かっていた約7mの松材の小屋梁です。
小屋組材はほとんどの材木が良好な状態でしたので写真は新しい地高梁との取り合いを微調整して刻んでいます。
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杉 梁
⑬2階の階段室の上に掛かっていた約7mの杉梁です。昔の建物はいろいろな材木の種類を使って造ってあります。この梁も胴差が新しくなったので下端を微調整して刻み直して元の位置に戻して組みました。
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小屋 梁
⑭2階に掛かっていた小屋梁は6本ありました。6本の内3本は梁の断面が小さく強度不足だったり腐食部分があったりと使えなかったので小屋梁は3本のみ微調整して刻み直して元の位置に戻しました。使えなかった3本の梁に替えて新しく大きな断面の太鼓梁に替えて組み直しました。
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⑮棟方向には約9mの地高梁と約5mの地高梁と棟木の下に約9mの高梁と約5mの高梁が組んでありました。今回小屋梁を大きな梁に替えて地高梁も大きな断面にして新しく組み直し既存の高梁は中高梁として高梁と新しい地高梁の間に組み直し二重梁で中高梁を受けました。その二重梁を墨付けしていますがこれも二階の軒桁に使用されていた材を転用して使います。
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⑯2階の小屋梁を新しくしたので束の長さが変わったので束を造り替えてつなぎ梁と束を組んでいる様子です。
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⑰つなぎ梁と束が組みあがりました。新しく造り替えた小屋梁の上の束のみ造り替えて古材のつなぎ梁と組み直しています。
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⑱束を造り替えてつなぎ梁と組み合わせた材木と既存のまま何も加工せず元の位置に戻せるつなぎ梁とをいつでも搬出出来るように積み上げている様子です。
施工概要
- 所在地
- 熊本県 阿蘇市
- 工期
- 500日
- 築年数
- 92年
- 特記事項
- 2017年12月竣工